書籍「落語と私」

桂 米朝著
 
 153ページ 客席とのほのぼのとした交流
 …時には社会問題や政治問題にまでおよんで、お客から 共感の拍手をちょうだいすることもあります。…略…われわれ落語家とお客様の間には、単に芸の売り買いといったものでなく、時としては、ほんの軽いゆきず りの縁(えにし)のごときものではあっても、心のゆきかいのようなものもあるということを言いたかったまでなのです。(引用ここまで)
 
 
 
 立川 平林(たてかわ ひらりん)さんの動物愛護落語が、ARCのホームページで紹介されていたので、ああ、やっぱり、噺家という存在は時代が変わっても社会にとって、とても大切なんだな、と感じました。
 
  落語と言うと「お笑い」のイメージが強いのですが、それはテレビ向けの安易なイメージであって、実際の落語は、人情話あり、戒めの話しあり、さまざまな喜 怒哀楽が織り込まれています。米朝の落語はとてもいいのでわたしはよく聴きます。師匠がおっしゃっていたのですが、むかしは30分くらいの噺のなかで2回 くらい、「くすっ」と笑えれば、それでよかったとのことでした。テレビが普及したことで、笑いもスピードや量をばかりを求められ、落語のように知的で繊細 で、社会的にも大切な意味のあった芸は、脅かされ、隅に追いやられてしまったのです。
 米朝の一番弟子、桂枝雀(かつらしじゃく)も、わたしが好 きでたまらない噺家の一人ですが、枝雀が得意とする噺のひとつに「天神山」という噺があります。youtubeなどで聴けますので、ぜひ聴いてみてくださ い。キツネの話です。毛皮問題です。捕まえて売ろうとする男を説得し、キツネを保護する男。「キツネってかわいいもんだんな。」普段はギャグを飛ばし、笑 いの耐えない枝雀の観衆も、しん、として聴き入っているのが分かります。
 
 枝雀師匠ももういません。米朝師匠も今年3月に亡くなりまし た。こんなすごい人たちの後を継ぐことなんて、できるんだろうか。ただでさえテレビやネットの世のなかで、今の若い噺家さんたちは大変だろうな、と思って いましたが、ARCのレポートで平林さんの存在を知り、とても心強く思いました。
 また、枝雀のお茶子(噺家のサポートをする女性)になったこと がきっかけで、噺家になったイギリス人女性のダイアン吉日さんの存在も最近知りました。英語落語、創作落語、手話落語など、フレキシブルで現代的、バイリ ンガルならではの感性で活躍されています。なお、ウィキペディアによると、ダイアンさんはベジタリアンだとのことです。フェイスブックなどもやっておら れ、非常に気さくなかんじのかたです。お会いしてみたい方の一人です。
 
 文責:猫家知恵蔵



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