あのホアキン・フェニックスが!エグゼクティブ・プロデューサー役を買って出たという映画『GUNDA』は、いま話題の畜産動物ドキュメンタリーです。
モノクロにして、ナレーションも音楽もないこの映画を紹介するのに、多少のネタバレを含むことをご容赦ください。いーや!そんなの断じて不必要という方は、ここまで読んだら、そのまま映画館へどうぞ♫
さて物語は、小さな小屋でまばゆい11匹の赤ちゃん豚を産んだ、GUNDAの母としての日常から始まります。
GUNDAはワラに埋もれた子豚を自力で助けたり、はたまたその子を踏み潰しそうになったりと、たくましく、ときにユーモラスな、どちらかというと肝っ玉母さんタイプ。騒がしくおっぱいを欲しがる子豚たちに追い回され、のどかな農場の片隅で、ワンオペ育児にいそしむのです。
農場の別エリアでは、放牧牛が互いに、何かわからないけど、もしかしたら愛など語らっている。あるいはカゴから脱走した鶏は、初めてのだいそれた冒険に出ていく。
注目すべきは、映画の中でGUNDAより、さらに動的に描かれるのが「片足の鶏」だということ。地球上で最も拘束して飼育される鶏は、檻から出た瞬間、風の音を聞き、大地を掴むように踏みしめ、野を渡り、農場の金網からも大胆に逃げようとします。鶏の好奇心の強さをよく知りぬいた描写に、自然と好感がもてました。
物語の終わりは突然です。唐突に「農場の刻」が来たのです。そこからの10分間は、おそらく映画史上に残る名場面でしょう。90分の作品に10分の途切れないラストというのは長く、この内容では苦しすぎる。
しかしそれでも、なお生きて、この「刻」を超えていく母GUNDA。演技しない真実の女優から、わたしたちは何を得て、何を返すことができるでしょうか。