ネットフリックスのドキュメンタリー映画。引き込まれるものが結構配信されています。
「SEASPIRACY」に続き、今回紹介するのは、海で生きる一匹のタコを追ったドキュメンタリー。
心に傷を負った映像作家が、海に潜り、一匹のメスのタコと交流し、彼女の賢く、力に満ち溢れた生涯に触れることで、自分を見つめ直すというあらすじです。
彼女の一生は1年ほど。その短い一生をまっとうするために知恵を絞り生き抜く姿に心を奪われます。
時にたくさんの足を大きく広げて魚と戯れるのを楽しみ、彼女に近寄ってきた一人の人間に好奇心をもち、足を伸ばして彼がどんな人なのかを確かめようとします。
サメに襲われて体の一部を失った彼女が、自分の住処である岩場の下に戻ってじっと自分の負った傷と戦っている様子。話が進むにつれて、懸命に毎日を生きる彼女から目が離せなくなります。
そして最後、彼女が一生にたった一回の交接を終え、子どもを産み、その一生を終えるまで、カメラは回ります。
観る人は、彼女と出会った映像作家の気持ちと同じように、彼女と別れるのを辛く感じるのではないでしょうか。
それほど彼女の生きざまは生命に満ち溢れ、美しい。命がかけがえのないものであることを痛感させられます。
2021年の英映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)と、4月25日発表の米アカデミー賞でともに最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品。
私たちは、タコを生きたままで茹でたり、生きたままで足を切断して「料理」します。そして今も商業漁業で海の生態系を破壊し、彼女たちの住処をめちゃめちゃにし続けています。彼女たちがそのような扱いを受けるいわれがない、賢く美しい、かけがえのない生き物であることを考えるきっかけにもなる作品だと思います。