書籍「永遠の絶滅収容所」

現代の人々と動物との関係において、すべての人々はナチスである。

本書では強制収容所と屠殺場の共通点を示し、人が人に行う差別と、人が動物に行う差別はその構造が同じであることを明らかにしている。
ある生命は他の生命より価値があり、強者は弱者を搾取する資格があるという制度の下続けられている動物へのホロコーストを廃止させることなくして、命を大事にするという精神をはぐくみ平和を成し遂げることは困難であると、本書は説く。

また、よく言われる「ヒトラーがベジタリアンである」という伝説は本書で明確に否定されている。

以下、「永遠の絶滅収容所」より

彼の食事の好みがなんであったにせよ、ヒトラーはドイツにおけるベジタリアンの主張にはほとんど共感を示さなかった。彼が1933年に政権を握ったとき、ドイツにおけるすべてのベジタリアン組織を禁止し、その指導者を逮捕し、フランクフルトで出されていた主要なベジタリアン雑誌を発売禁止にした。ナチの迫害を受けて、肉食の国における少数派にすぎなかったドイツのベジタリアンは、国外に逃げるか地下にもぐることを強制された。ドイツの平和主義者でベジタリアンであったエドガー・クップファー=コーバーウィッツはパリへ、続いたイタリアへ逃亡し、そこでゲシュタポに逮捕されて、ダッハウの強制収容所へ送られた。戦時中ナチス・ドイツはベジタリアンの食事が戦時中の食糧不足を緩和するにもかかわらず占領地域におけるすべてのベジタリアン組織を禁止した。

歴史家ロバート・ペインによると、ヒトラーが厳格なベジタリアンであったという神話は、主としてナチス・ドイツの宣伝大臣ヨーセフ・ゲッベルスの功績である。
ヒトラーの禁欲主義は彼がドイツに投げかけるイメージにおいて重要な役割を演じた。広範に信じられている伝説によると、彼は煙草を吸わないし、酒を飲まないし、肉を食べないし、女性と何もしない。最初のものだけが真実である。彼はビールや薄めたワインを頻繁に飲んだ。バヴァリアのソーセージが大好物だったし、愛人のエヴァ・ブラウンがいたし、彼女はベルグホフで彼と静かに暮らしていた。女性とその他の控えめな情事もあった。彼の禁欲主義はゲッベルズが彼の全面的な献身、自己制御、並の人間とは違うことを強調するために発明したフィクションである。この禁欲主義の外見上の見せ物によって、彼は国民へのサービスに献身していると主張できたのである。

実際ヒトラーは「著しく自分を甘やかしており、禁欲の本能などまったくもっていなかった」とベインは書いている。

彼の料理人はヴィリー・カンネンベルクという大変肥満した男で、極上の料理を作り、宮廷道化師のような人物だった。ヒトラーはソーセージの形態以外の肉は好きではなかったし、魚は全く食べなかったが、キャビアは好きだった。彼は甘いもの、砂糖漬け果物、クリームケーキについては通で、こうしたものをたらふく食べた。彼はクリームと砂糖を大量に入れた紅茶とコーヒーを飲んだ。彼ほど甘党の独裁者は前代未聞である。

同情と穏やかさについては、そうしたものはヒトラーにとって唾棄すべきものであり、彼は力が正義であり、強者は地球をまるごと受け継ぐに値すると信じていた。かれはベジタリアンの非暴力哲学を軽蔑しており、ガンジーをあざけっていた。

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