地下水が消えると食糧が消える

サウジアラビアは石油産油量は多いが、降雨量は世界で3番目に低い国だ。
日本の年間降水量は1,668mmだが、サウジアラビアの年間降水量は59mm、最も低いのはサハラ砂漠を抱えるエジプト51mm、二番目はリビアで56mm(*1)だ。しかしエジプトにはナイル川がある。サウジアラビア、リビアに大きな川はない。

そのため、水資源は彼らにとってとても貴重であり、水がないと作れない穀物も、とても貴重なものだ。
このサウジアラビア、リビア両国とも、同じ水資源の枯渇という問題を抱えている。

サウジアラビア

サウジアラビアは人口2,883万人だが、その人口を支えるための穀物生産に1970年代から灌漑農業を発展させてきた。
センターピボット灌漑という、地下水を組み上げ中央から円形に水を撒くという灌漑方法で、現在Google Mapなどを使ってもサウジアラビアの至る所で確認できる。

しかしこの風景、もう少ししたら見ることができなくなる。

その灌漑用の水を、地下深い化石帯水層からくみ上げているからだ。
硬い帯水層の下に、古代に取り残された大量の水が眠っている、それが化石帯水層だが、この地下水は、雨水等で補充されないため、使いきったら終わりという石油と同じ限りある資源だ。
大半がすでに枯渇しており、毎年作付面積を減らし、2016年中には生産が停止される予定になっている。地下水を80%使い果たし、2020年には枯渇するためだ。

しかし、この貴重な穀物、これまでその多くを牛に食べさせてきたというから驚きだ。大量の水を使い、穀物を栽培し、自給率は一時期は100%を超え輸出国になっていたが、それは必ずしも人々の口に入っていたわけではなかった。
停止するための計画も農家は早々理解はせず、国が買い取らなくなる小麦に変え、飼料用のアルファルファ(もっと多くの水を消費する)を生産するなど、政府が想定しないトラブルも起こっているという。そうこうしていくうちに、地下水は完全な枯きに向かっていくのだろう。
今、サウジアラビアは、人用と飼料用の穀物を求め、外国の農業に投資し、農業用地、穀物を買い込んでいる。例えばサウジアラビアの乳牛に食べさせる餌を得るために、米国アリゾナ州の地下水を組み上げ農業を行っている。
幸い、海外から穀物を仕入れるための外貨を、サウジアラビアは石油で稼ぐことが出来る。でもそれも限りのある資源。
本当にこれまで辿った経緯、つまり貴重な地下水を使い果たしてきたことは、正しかったのか。
でももはや覆水盆に返らずだ。

その他の地域

地下水の過剰渇水(ようすい)による水の枯渇はいたるところで危険性を予告されている。
化石帯水層は、水が補充されないため、その水がなくなれば万事休すだ。中東・アメリカ南西部はいずれ農業が出来なくなるといわれる。上記リビアも同様だ。
そして、他国から大量の穀物を輸入することに頼らざるをえない日本は、これらの問題は決して人ごとではない。

アメリカの世界最大といわれるオガララ帯水層も、多いときは年間1.5mにもおよぶ水位 が低下したとされている。水位が下がるにつれ、揚水コストが高くなり、放棄されてしまっている灌漑農地もあるという。

サウジアラビアの南に位置するイエメンでも、地下水が毎年1.8m下がっている。2009年、イエメンの米国大使Stephen Secheは、イエメン中が困窮した水不足について、「水不足は、同じように絶望的な結果を伴う絶望的な措置をとるために絶望的な人々を導いてきました」と述べている。さらに同年、彼は、水不足が原因の紛争がすでに3つの地域で起きていると報告している。*2

中国の華北平原でも地下水が低下しつつある。

自分の土地の井戸が枯れると、人々はとても不安になる。貧困が忍び寄り、不安は暴動へ、内戦へ、そして戦争に繋がる。これは飛躍した話ではない。石油の問題よりも、水不足は、より暴力につながりやすい。
各国は水不足を懸念し、その利用に厳格になりつつある。
水を大量につかって作られる少々の肉類、乳製品、卵、レザー・・・、これまでの量を今後も作り続けられると思ってはいけないのだ。

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水のリスクについて知りたい場合は、こちらのサイトから。(※洪水のリスクも有るため日本もリスクは高いほうだ)
http://www.wri.org/applications/maps/aqueduct-country-river-basin-rankings/#x=0.00&y=0.00&l=2&v=home&d=bws&f=0&o=139&init=y

*1 世界銀行 http://data.worldbank.org/indicator/AG.LND.PRCP.MM
*2 https://wikileaks.org/plusd/cables/09SANAA2058_a.html」

記事:NPO法人アニマルライツセンター

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