先日家族が亡くなり初めて喪主を務めた。喪主と言っても葬式の中で遺族代表として何度か挨拶をするくらいで大した役目ではないのだが、どちらかといえば葬儀よりもその準備段階で物事を決定していく段取りのほうが大変だった。その経験から葬式における動物の犠牲をどのように避けていけばよいのか、参考にしていただければと思う。
※葬儀屋や宗教、親戚の規模などにより内容に違いがある可能性もあるので一例としてお読み下さい
服装から動物の犠牲を避ける
まず葬式で真っ先に必要になるのが式服だろう。毛皮など滅多に使うことがないくせに一向にファーフリー(毛皮廃止)宣言をしないスーツ業界なだけあって売り場は当然のように羊や蚕の犠牲で溢れているわけだが、筆者は以前はるやまでポリエステル100%の式服を購入していたため衣類はアニマルフリーで行うことができた。ネクタイも通販でシルク不使用のポリエステル100%のものが購入できるしフェイクレザーの靴やベルトは珍しいものではない。
式服購入の際のスタッフさんの話しではウール製品は虫食いなどの管理が大変なので管理が楽なスーツが欲しいという消費者の要望からポリエステル100%の商品を作ったと聞いた、ついでに家庭用洗濯機で洗濯もできるのでクリーニングに出さなくてもよいのはありがたい。マイクロファイバーの環境問題を考えると喜んでばかりいられないが、以前スーツ屋に綿100%で作れないのか質問したところシワができやすい素材は厳しいものがあるとのことだった。またウールにこだわるのは染め色の質の問題が大きいと言っていた。私としてはポリエステル100%の黒色になんの不満もないのだが・・・(なんの自慢にもなりませんが当方カラーコーディネーター検定2級合格のファッション分野出身です)
式服に関しては私が購入してから7年くらい経っているのでもしかしたら取り扱っている店舗が増えているかもしれない。毛皮も含めいろんなスーツ屋に問い合わせてみてほしい。
布団から動物の犠牲を避ける
病院で死亡確認が終わるとすぐに葬儀屋の一覧表が渡される。そこで選んだ葬儀屋が故人をお迎えに来てくれて、自宅まで送迎してくださる。家に着くと故人を担架から降ろし布団に寝かせるのだが、この時に使う敷布団・掛け布団は自宅のものを使用する。急に亡くなられる方もおられるので対応しずらい部分である、布団はしょっちゅう買い替えるものでもないため普段から身の回りの動物性製品を意識し、家族が買い替えの際は羽毛布団などを選ばないように助言することが求められる。日頃からよい家族関係を築くことも動物のための活動の一環と言える。
故人に使用した布団は納棺後に処分する。価値観に個人差があるかもしれないが故人が生前使っていたものが好ましいのかもしれない。ちなみに布団の処分は地域の大型可燃ゴミに出す方法と、葬儀屋に1000円程度支払って処分してもらう方法もある。このような理由でゴミを増やすのもいかがなものかと思う次第だ。私の隣の家のおじさんは墓石に文字を彫る仕事をしていたが、その方はゴミに出されている納棺後の布団を拾ってきて使っていた強者だった、当時は変わり者のような目で見られていたが今の時代ならスーパーエコおじさんと呼ばれていたかもしれない。
香典返しから動物の犠牲を避ける
家族が亡くなった翌日には葬儀屋の担当者と葬儀終了までの各種詳細を決めていく作業が始まる。まずは故人が亡くなったことを知った者たちが次々と手を合わせに香典を持って来られるので、その時にちょっとしたお返しをする品を選ぶ。
香典返し専門のサイトを見るとお菓子やハンバーグなど食品の取り扱いもあるようだが、一般的にはタオルのような日用品を選ぶ方が多いのではないだろうか。決定権を持った家族が何を注文するのか不安な場合は同席して自分の意見を述べたほうがよい。
そして香典が高額の場合は別途の香典返しが必要になることもある。例えば5万円の香典に対してタオルだけでは金額が見合わないため、後に金額に見合う品を返すというわけだ。そのために葬儀屋は高額香典カタログのようなものを準備している。私の地域では香典の半額相当をお返しするという暗黙のルールがあり、5万円の香典の場合、2万5000円分の品を返すのだが、お相手の嗜好もよくわからないという時にこのカタログの中から好きなものを選んでくださいねということで金額別のそういうカタログがある。その中にも動物の犠牲商品がある可能性は高いため、高額香典返しには最も頭を悩ませられるかもしれない。
ただ別の視点で考えると「この中から好きなものを選んでね」というスタンスもどうかと思う。故人やその家族への想いに対するお返しなのだ、私はあなたにこれを贈りたいという人間らしいまっすぐな気持ちがいちばんの要ではないか。何を贈ってもその気持ちが本物なら必ず相手に響くことだろう、好んで動物を苦しめたい人など普通はいないのだから。
通夜・葬儀の食事などから動物の犠牲を避ける
通夜の日になるといよいよ食事関係が必要になる。通夜は自宅で行う場合と葬儀場で行う場合があり、自宅なら自分で思い通りに炊事ができることだろう。昔はどんなに大勢の親戚が来ようとも全て自家製で対応していた家も多かった、というかそれが当たり前の時代だったわけだが、今や電話ひとつでお店に盛り皿を注文できるのだからはなから自家製という選択肢がない方も多いのかもしれない。家族が亡くなると葬儀に向け想像以上に時間に追われる日が続く。どこのお店がどの程度の対応をしてくれるのか平時から把握しておくに越したことはない。
通夜を葬儀場で行う場合はお帰りの際親戚などにお膳(大きな弁当)を配る、また葬儀当日にはお昼ご飯(軽めの弁当)と、終了時には再度お膳とおまけ的な品(会葬御礼品)を準備する。厳密には火葬場で遺体を焼いている間も休憩室で待つことになるので、そこでもちょっとした食事の注文ができるため、通夜と葬儀の中で最大4回食事と1回の粗品がある。
火葬場以外の食事・会葬御礼品は事前に葬儀屋の担当者とどの商品にするのかを決めるので、その時に動物性への対応ができるかどうか、動物性と無関係な会葬御礼品があるのかどうかの確認をする。私の場合は和食弁当ならエビフライや魚を抜く感じで動物性不使用にできますよとのことだったので和食にしてもらい、会葬御礼品は赤飯と、エビエキスなど使ってないようだったのでのりを選んだ。重ね重ね言っておくが葬儀まではほんとうに忙しない。余裕がなく動物性使用・不使用の確認ができない場合もあると思う。そんな時はより犠牲の少ないほうを選ぶのも一つの方法であることを添えておく。また動物性不使用について参加者全員の理解が得られるとも限らない。特に皆が精神的に落ち込んでいる時なので気配りをしつつ慎重に進めていく精神力も重要になる。
ちなみに洋食弁当のほうはというと、地元のブランド牛や銘柄鶏を多用したようなメニューであった。
もうひとつ、担当者によっては動物性不使用の意味を理解していない人もいるかもしれないので、アレルギー対応を例にして話すのもよいかもしれない。エビと魚は抜いてあるけど出汁にカツオが使ってあったなどという事態に陥らないためにも。
意外な落とし穴
できる限り動物性を避けて進めてきた葬儀であったが、火葬場に着いて故人の前でお払いのようなことをしている最中、ふと顔を上げると目の前にバタリーケージ卵がお供えしてあるではないか。その瞬間私の頭の中はカチャカチャと乾いた音が響く不衛生な鶏舎の様子に包まれ、連日の疲れが一気に噴出しその後の調子を崩された。
我が家は神道なのだが宗教に興味のない私は普段は全く関わっておらず、神道が何をお供えしているのかも把握していなかったのである。今後は宗教の行事にも参加し、何でも気軽に話せる間柄を築いていくことが課題のようだ。卵などお供えしなくても葬式はできると。
最後に
このように人がひとり亡くなれば大騒ぎになるわけだが、畜産では死んだり殺処分した動物はとりあえずその辺にポイだ。葬儀を介し改めて畜産動物の扱いの悪さを考えさせられた。
今この瞬間も農場では動物が苦しみの声を上げている。避けられる部分を避け、アニマルウェルフェアを向上させ、消費量を減らしていくことでしか現実的に動物たちの置かれている状況を改善することはできないのだ。
そのためにはやはり周知啓発が基本になる。
あなたも会員になったり、アニマルライツセンターアクショングループに参加したり、ボランティアに参加したり、動物たちのために声を上げてください。
この記事が先々の参考になれば幸いです。