書籍「かわいそうな ぞう」

戦前、上野動物園(東京)・天王寺動物園(大阪)・東山動物園(名古屋)などでは、それぞれ多くの動物が飼育されていた。しかし戦争の激化により、空襲時に逃げ出したら危険ということで[1]、陸軍の判断に基づき地方行政から猛獣たちを殺処分する戦時猛獣処分の命令が出された。本作を含め、多くの物語で直接の軍の命令とされているが正確ではなく[2]、実際に殺処分命令を出したのは、初代東京都長官(現在の東京都知事)となった内務官僚・大達茂雄であった。
各動物園の職員達は反対したが、食糧事情の悪化などもあり、結局戦争が終わったときにはほとんどの動物は死を迎えており[3]、大きな動物で戦争を生き延びたのはキリンだけであった。なお、本作で登場したゾウのジョンは1943年(昭和18年)8月29日、ワンリーは同年9月11日、トンキーは同年9月23日に餓死している。
東京が都政を敷いて間もない1943年(昭和18年)の出来事であり、東京都として最初期に行った動物園行政が飼育動物の殺処分命令であった。上野動物園にはこの象舎のすぐそばに動物慰霊碑が建立され、この戦争で命を落とした動物たちに対しての慰霊の行事は、終戦後60年余を経た現在も続いている。
 
ウィキペディアより。
 
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日本語では秋山ちえ子さん、英語ではシンディー・ローパーさんが朗読をし、広めている。わたしも小学校2年生のころ、全文を暗記し、暗唱を行った。有名な絵本であるが、戦争の悲惨さを知らず、戦争を美化する風潮が強い今、改めて多くの人に読んでいただきたいと思う。
戦争では「死者」の数は発表されるが、殺されたり、亡くなったりした動物たちの頭数までは数えられない。人間より劣位に置かれているからということもあるが、あまりにも多すぎるから、ということもある。原爆資料館で被爆した馬の複製を見たことがある。ショックで忘れられない。戦争を美化する人々はこういった資料を見ていない。殺された人々、動物たちの被害の甚大さを見ていない。人間たちは避難したり防空壕に入ったりできたかもしれないが、動物たちはそれすらもできない。それはいまだに戦火の耐えることのないこの地上での現実だろう。戦争は人間同士の話ではない。権力を持った、カンチガイした一部の独裁者に各国の庶民が巻き込まれ、名もなき罪のない動物たちが巻き込まれるということだ。「見世物」として連れて来られ、芸当を覚えさせられ、戦争が激しくなったからという理由で、殺処分させられたり、それもできない動物たちは飢えで殺された。「バンザイ」の芸当をすればごはんがもらえると思って、最期まで、「バンザイ」の芸当をやりながら。
 
わたしは小学校の修学旅行では長崎、中学校では広島に行った。そういうものだと思っていた。でも大学の同級生たちは、修学旅行でスキーやディズニーランドに行ったなどと話しているのを聞き、びっくりした。ならばいつ知るのだろう、人間の愚かさを、戦争の悲惨さを。
せめて読んでほしい。この絵本は。どの図書館にもあるはずだから。動物たちは人間のことばを持たない。それだけで、劣位に置かれている。ならば、人間が彼らのために語るのは最低限の義務だろうとわたしは思う。この絵本はそのためにある。
 
 
猫家知恵蔵
著書「Veganという生き方」「生きルーム」

http://mind-k.com/book/


 

 

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