書籍「豚は月夜に歌う」

犬や猫を殺して食べることに、日本人の多くは拒否反応を示すと思うが、豚や鶏や牛についてなら許容されてしまうのはなぜか。
犬や猫とちがい、「家畜」と呼ばれる動物の感情について語られることはあまりない。そのため彼らへの共感を持ちにくいのかもしれない。

本書では「家畜」と呼ばれる動物たちの感情が、記されている。
タイトルにもなった美しい満月の晩に浜辺で歌う豚の話や、鶏と七面鳥の友情や年老いてほとんど目の見えない雌鶏とチャボとの絆、屠殺場で気絶させられ皮をはがされそうになり突然フェンスを飛び越えて逃げた牛の話など、これらたくさんのエピソードを読むと、豚や鶏や牛たちには世界がどう見えているのかを感じ取ることができる。

彼らの感情世界は、私たちと変わらない。人間と同じように悲しみ、喜び、苦しみ、子どもを思い、友情を持ち、仲間の死を悼み、自分の死を思い恐怖する生き物だ。
いや、私たちよりもずっと生きる喜びを知っているのではないだろうかとさえ思う。人間から残酷な目に合わされてもそれを許し、友好の情を示す心も広さももっているし、種の壁を超えて友情を築き上げる方法も知っている。この本を読むと、この優しく、美しく、生を謳歌することのできる生き物に対して、私たちがどれだけひどい仕打ちをしているのかと痛感させられる。

本書では動物と共に過ごしたことのある人のエピソードだけでなく、牛の母子の愛情深さが牛の目の構造にも表れていることや、鶏の鳴き声に含まれている情報、孵化前の雛と母鶏とのコミュニケーション、商業飼育される鶏の1/4が足に障害を持っており苦痛を抱えていることなど、生態や行動観察に基づいた客観的な研究も数多く収集されている。

すでにアニマルライツの活動をしている人には、動物のことを人に伝えるために、そしてアニマルライツに関心の無い人には、「家畜」と呼ばれる動物たちが、本来ならどんなふうに扱われるべきなのかを考えてもらうために、ぜひ読んでもらいたい一冊だ。

 

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