菜食大国・台湾におけるヴィーガン事情

今回アニマルライツセンターボランティアスタッフのFさんがインタビューをしてくれました。
ヴィーガンが憧れる台湾でも意外にも私達と同じ苦労が、、!とても興味深い内容です。

台湾は広く菜食が普及している国であり、ヴィーガンにとっても過ごしやすい環境であることがよく知られている。歴史的には、17世紀中ごろから斎教と言われる仏教,道教,儒教の三教を合一した宗教が中国大陸からもたらされ、信徒に五葷を用いない菜食(それを「素斎」という)を勧めたことが、菜食文化を形成させた一因である。現在においても、仏教や道教、その他の民間宗教などの影響で、菜食を敢行する者が多く、人口の13%程度が菜食だと言われている。また、特にこれらの宗教を熱心に信仰していない場合でも、還願(huan yuan)といわれる、神にお願いした祈りが叶った時にその見返りとして、一定期間菜食を実施することも見られている。または、旧暦の精進日である一日と十五日には菜食にしたり、朝食には肉類を摂らないなど、生活の中に菜食が溶け込んでいるのが台湾という国なのである。

このような背景をもちながら、台湾においても、動物の権利環境問題に対する関心から、ヴィーガンに対する注目が強まっている。ヴィーガン料理などを提供するフェアもいくつか開催されており。たとえば、2015年にはTaiwan Vegan Frenzy Festival (草獸派對)が、2019年にはNo Meat Festival (無肉市集)が開設されている。伝統的な菜食文化の中で、新たなヴィーガン文化が浸透しつつあると言えるだろう。

本稿では、前述のTaiwan Vegan Frenzy Festivalの創設者であるSidneyさんへのインタビューを掲載したい。Sidneyさんはアメリカで服飾デザインを学んだあと、台湾に帰国し、ヴィーガン・アパレルを立ち上げるのと同時に、ヴィーガン・フェアも開設した。彼女がどのような理由でヴィーガンになり、ヴィーガン・フェアを立ち上げるに至ったのかなどについて、以下のインタビューで紹介していこう。

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ARCボランティアスタッフF(以下F):まずヴィーガンになった理由を教えてください.

Sidney(以下S):まず、ベジタリアンを始めた理由については、長い話になりますが、簡単に言いますと、猫が病気になってしまいまして、そのときに私はアメリカで学生をしてました。お医者さんによると、重たい病気で長くはもたないだろうと。それで、最後に一目会えるように願掛けをしました。そのときに、もし会えたら1年間菜食をします、と願掛けをしたんです。それで実際に、猫が亡くなる前に会うことができたので、1年間、菜食をすることになりました。

S:菜食をしてみてわかったのは、大変健康的だということです。それ以前は、私は何でも好きなように食べていました。お肉も海鮮も好きでしたし、野菜はほとんど食べていませんでした。それで菜食をしてみて、健康的になったので大変ショックでした。

F:最初のきっかけは、とても台湾らしいといいますか、願掛けだったんですね。

S:はい、台湾人はよく願掛けをします。仏教的ですし、道教的かもしれないですし、なにかしら宗教的な影響でしょうね。それで4年くらい菜食を続けて、それからヴィーガンについて学びました。友達にヴィーガンがいましたし、いろいろ情報を集めました。菜食はしていましたが、ベストを尽くそうと思いまして、それでヴィーガンになることにしました。

F:最初に菜食に移行するのに、むずかしいところはなかったですか。

S:たしかに野菜とかの味になれるのはむずかしかったです。私の家族にはベジタリアンはいなかったですし。最初のころはがまんができずにチキンを買ってしまうこともありました。もちろん、それはよくないことだと思っていました。それから、いろいろなレストランや、新しい食べ物を探して、試すようになりました。当時は、菜食をするのはあまり簡単ではありませんでした。いまのほうが簡単です。お店も増えましたし、グーグルで検索できますし。当時も菜食レストランはありましたが、そんなにおいしくなかったですね。

F:飼っていた猫がなくなったのは何年ですか。

S:2011年です。

F:それでヴィーガンに転向したのは?

S:2015年です。

F:たしか、ヴィーガン・フェアを組織したのが2015年でしたよね。ものすごく早いとおもったのですが。

S:はい、というのも、当時は台北にはあまりいいヴィーガン・レストランとかがなかったんです。台北は大きい都市なんですけどね。それで、台北におけるヴィーガンライフをもっと簡単なものにしたかったんです。2015年7月にヴィーガンになって、同じ年の12月に最初のヴィーガン・フェアを開催しました。

F:最初のフェアにはどれくらいの参加者があったんですか。

S:19業者ですね。食べ物以外にも、アパレル、靴などのお店も参加していました。

F:いまではどれくらいの参加者がありますか。

S:今年はコロナの影響でしませんでしたので、去年だと、11月に開催して、55社くらいですね。

F:ヴィーガンになってすぐにフェアを開催するとは驚きでした。

S:私は何かを思いついたらすぐに行動するところがあって。新しいことをするのも、新しい人に会うのも楽しいですし。最初のほうは規模も小さかったので、それほど難しくはなかったです。それから少しずつ規模が大きくなりました。

F:あと、アパレルブランドももっていますよね、Vunicorn。これはいつ立ち上げたのですか。

S:同じ2015年です。この年は私にとってのヴィーガンイヤーですね。

F: 当時はほとんどヴィーガン・アパレルはなかったんですよね。

S:はい、そうですね。

F:日本では、まだヴィーガンに対する理解度は高くはないのですが、台湾ではいかがですか。台湾で留学した日本人のヴィーガンに聞くと、台湾人は異なる考えに対しても寛容だという意見が多かったのですが。

S:うーん、そうとは思いません。ヴィーガン自体が新しい概念で、新しいライフスタイルですし。ヴィーガンの方にも問題があると思います。ヴィーガンには2タイプがあって、ひとつは、ハッピーヴィーガンのような、楽しく、やさしく人に対して接している人。もうひとつは、アングリーヴィーガンのような、厳しく、批判的に人に接しているような人です。このような傾向はどこの世界でもあるとは思います。

F:台湾でも、ということですよね。

S:はい、そうです。どこでもそうだと思います。アンチヴィーガンが生じるのは、アングリーヴィーガンのような人たちに対する反応だと思います。

F:Sidneyさん自体は、そのような批判に直面したことはありますか。SNSや対面で、ですけど。

S:いえ、ないですね。私はあまり人と争うのが好きではないので。時間の無駄ですし、お肉を食べてはいけません、とか人に言うのは自分のスタイルではありません。もっとフレンドリーな方法で、ヴィーガンを進めていきたいと思います。私は仕事もありますし、人と争うことに時間をかけられません。

F:台湾でも、そういうアングリーヴィーガンはいるわけですか。

S:ええ、それはパーソナリティの問題だと思います。

F:現在では、台湾のヴィーガンは増えているんでしょうか。

S:増えてはいますけど、まだまだ少ないですよね。日本はもっと少ないと思いますけど。台湾だと、そもそもヴィーガンという概念はあまり知られていないですね。ヴィーガンという言葉を聞いたことがあっても、ベジタリアンと同じ、くらいしか知識がないと思いますね。そういう誤解はあるとおもいます。

F:台湾は菜食大国ですが、菜食からヴィーガンに移行する人は少ないんですよね?

S:台湾だと、政府の統計では、13%が菜食、ベジタリアンですね。ヴィーガンに関しては、1%くらいですね。

F:最近では、若い世代は、環境問題に関心を持っていると聞いていますが、ヴィーガンになる理由としても、環境問題は大きな割合を占めているのでしょうか?

S:若い人たちはたしかに環境問題に関心を持っていて、ヴィーガンを試そうとするひとたちもいます。ただ、フルタイムのヴィーガンではないですね。ヴィーガンについて学ぶために、試してみるという感じだと思います。

F:現在、Sidneyさんがヴィーガンをされているのはどういう理由でしょうか。

S:やはり動物の問題ですね。環境も大事な問題ですが、動物が大好きですので、それが一番先に来ます。

F:ヴィーガンが普及するには、どのような方法が効果的だと思いますか。

S:難しい質問ですが、ヴィーガンライフがとても快適で、よいライフスタイルであることを示す必要があります。よい見本として。人に対して、こうすべき、ああすべき、というのはあまり効果的であるとは思いません。自分が幸せそうじゃないと、ヴィーガンになろうとはしないですよね。

F:ヴィーガンでも、残酷な映像をポストするとか、そういうアプローチをとる人も多くいると思いますが、そういうアプローチよりは、もっとポジティブなアプローチのほうがよいと考えているわけでしょうか。

S:そうなんですが、私もかつては、アングリーヴィーガンでした。残酷な写真をポストしたりしていました。ただ、それはあまり良い効果はうみませんでした。だいたい1年くらいはそういう感じでした。そのときに、私の旦那さん、当時はボーイフレンドでしたが、もうやめたほうがいいよと。そういう写真とかをシェアしないほうがいいよ、友達をなくしちゃうよと。私は、周りの人たちの感情を考えていませんでした。それで、そういうスタイルをやめました。もちろん、そういう写真を示すのは大事なことだと思いますが、毎日見せたりするのはよくないと思います。

F:日本人のヴィーガンでも、そういう経験をする人がいらっしゃいますね。最初はアングリーヴィーガンだったけど、それがあまり効果的なではないと学んで、情報発信の方法を変えているようです。

S:それはノーマルな移行だと思いますね。最初は、動物などの問題のことを知って、怒りを覚えて、それを共有したい、知ってほしいと思う。そのあとで、その方法があまり効果がないことを知って、次のステージに移行する。もっとピースフルで、穏やかな方法に移行する。ただ、なかには、そのような変化をせずに、ずっとアングリーなままの人もいます。それはちょっと本人にとってもよくないと思います。

F:厳格なヴィーガンは、パートタイムヴィーガンのような考えも、受け入れにくい人もいますが、そういうダイエットスタイルも、SidneyさんはOKですか。

S:ぜんぜん問題ありません。それぞれ食生活も違いますし、学ぶスピード、慣習を変えるスピードも違いますよね。それぞれ異なりますので、100%でも、50%でも大丈夫です。

F:きょうは台湾と日本のヴィーガンは同じような経験をしていることを学びました。

S:そうですね、文化的にも、お互いに似ている部分はあるとおもいます。ただ、日本人は、ユニークなこと、他の人と違うことを気にしますよね。台湾人は、伝統的なんですけど、もっと自由ですね。新しいものに対して、受け入れる体質がありますね。

F:日本人のほうが保守的だと思います。

S:日本は古い歴史がありますし、権威に対して忠実ですよね。台湾人は、ハラキリとかは、まったく理解できないと思います。台湾は、国としては、せいぜい100年くらいですから、赤ちゃんみたいなものですよね。日本は、そういう文化が強みではあると思うのですが。

F:今日は興味深いお話ありがとうございました。

シドニーさんのyoutubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/@TaiwanVeganFrenzy

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