書籍「収奪された大地-ラテンアメリカ500年」(ラテンアメリカの切り開かれた血脈)

畜産動物のアニマルウェルフェアは、森林破壊や気候変動とは切っても切れない関係にありますが、その森林破壊でもっとも痛めつけられているアマゾンがあるラテンアメリカについて書かれた本です。有名な本なのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。ベネズエラのチャベス元大統領が、オバマ元大統領に勧めたことで有名になりました。

大航海時代から現代まで、ラテンアメリカという大陸が、外部からの侵入者である西欧諸国の人々にどのように搾取されてきたか、そのプロセスがわかる、植民地経済は過去の出来事ではなく、現代の資本主義経済に直結しているということがよくわかります。
イラク戦争やシリア、ウクライナ問題まで世界で起きている紛争とつながっていますし、アメリカのコントロール下にある日本や韓国にも当てはまる部分が多くあります。

ラテンアメリカというと、貧困やゲリラ、政情が不安定というイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、中南米諸国がなぜそんなふうになってしまったかも、この本を読むとよくわかります。

わたしが暮らしていたニューヨークは移民がとても多いので、いろいろな国の事情を垣間見ることができます。とくにメキシコやエクアドルなど中南米の移民がとても多く、スペイン語が第二公用語のようになっているほどですが、その中には不法移民としてアメリカに入国して生活している人も多く、国や州の最低賃金以下の給料で働いているのが工場畜産の延長の大規模食肉加工会社だったりします。彼らがなぜそこまでしなければならないのか、からはじまり、大航海時代のスペイン、ポルトガルをはじめ、アメリカやイギリス、フランス、北欧諸国によって、ラテンアメリカという土地が少なくともこの500年間どのように搾取され翻弄され続けてきたのか、そしていまも搾取され続けているのか、そのプロセスがわかります。

この本をわたしに勧めてくれたのはメキシコ人の友人ですが、彼はもともと不法移民としてアメリカに入国しています。侵略者である白人を「グリンゴ」と蔑称するなど、ラテンアメリカンとしての誇りを持ちつつも、故郷であるメキシコの土地を搾取しつづけている侵略者アメリカという国で移民として生活し、そしてアメリカの価値観にもいやおうなく染まってしまっている。そんな彼らを見るとき、わたしは自分の国である日本を見ているように思えるときがあります。日本からは地球のほぼ反対側に位置するラテンアメリカのことなので、あまりピンとこない方もいるかと思いますが。

コロンブスがアメリカ大陸を「発見」した日は『コロンブスデー』と呼ばれアメリカでは祝日ですが、最近では「先住民の虐殺」と結びつける考え方が主流になってきています。

「西欧諸国が悪」と言いたいわけではありません。この本には、動物も人間も環境をも痛めつける現代の集約畜産を生んだ、いま世界中で大きな影響力を持ち、そして衰退を始めている資本主義と、それを生みだしてきたプロセス、それを突き動かしてきた原動力は何なのか、根源的なことが見えてきます。

「収奪された大地」藤原書店 エドゥアルド ガレアーノ (著), 大久保 光夫 (翻訳) 

文/さかもとよしこ→個人ブログでは動物以外にも記事を書いています

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