「ストレンジフィクション」= 「奇妙な作り話」というカテゴリで、日本で出版された本書は、そのすべてがフィクションなのではなく、多くは私たちが普段目の当たりにすることのない現実で、そして作り話の部分ですらいつか現実になるのではないかと思わせる、どんなホラー小説よりも怖い小説だと感じる。
物語の主人公は、大学の実験室で去勢され、臓器を抜かれ、残酷な実験の末に気が狂い、人間レベルの知性を持ってしまった鼠「ドクター・ラット」。
病気は一人で負い、自分で戦い、可能なら打ち負かす、そのために動物たちを犠牲にするべきではないと訴える実験に利用される動物たちに対し、魂を持たないとされる動物たちが実験台にされ、人間の医学の発展に貢献できることがどれだけ名誉なことであるかを、度々説こうとする。それはまるで、ドクター・ラットが、動物実験を正当化する人間の心情を代弁しているかのようである。
一方で、あるとき地球上のありとあらゆる動物たち、人間に利用され続けてきたすべての動物たちが、人間から身を守るために力を合わせて一つになろうとする。ペットとして愛されてきた犬も猫も、捕獲され続けてきた鯨たちも、一生卵を産まされ続け最後には殺される雌鶏たちも、牛も、豚も、動物園の動物たちも、そして野生の動物たちも。
「人間はおれたちみんながひとつの生き物だと気づいて、おれたちを殺すのをやめるだろう。それは突然のすばらしい認識となるはずだ」
動物実験が主だが、畜産や捕鯨、動物園の問題までもが数ページでカバーされている。
どんな結末が待っているのかは、是非読んで確かめて欲しい。
期待したとおり、腑に落ちない、私たちが向かっている未来、など色々な捉え方ができ、人間対動物の闇を考えさせられる、そんな一冊です。
投稿(みさき)