現在台頭しているCAFO(集中家畜飼養施設)の問題が赤裸々に本書では語られている。
2016年3月10日発行。
CAFO(集中家畜飼養施設)で飼育される畜産動物たちは、外の空気や春の匂いを感じたり、地面をひっかいたり探索したり、思う存分手足を伸ばしたりといった、あたりまえの行動を奪われてしまっている。本書では、こういった飼育方法が動物にとって不利益なだけではなく、地球環境、社会、私たちの健康にとっても不利益であり、どの面からみてもCAFOが持続可能な形態ではないことが具体例を挙げて書かれている。
全504ページの本書からいくつか抜粋する。
(アメリカで)「監禁された食用家畜が出す糞尿は乾燥重量にして年間3億3500万トンと推計されるが、これは公共処理施設から生じる人間の排せつ物の下水汚泥と比較すると40倍以上に相当する。」
「ノースカロライナ州道226号線沿いの学校を調べたある研究によれば、工場式畜産場から3マイル(約5km)以内の地域に住む児童はそれより外に住む児童とくらべ遥かに高い率で喘息を患っており、喘息に関連する救急外来の受診も多い。」
「1965年、家畜の飼養数は常時80億頭、屠殺数は年間100億頭だった。今日ではCAFOが成長の加速と生存年数の短縮に拍車をかけたこともあり、飼養中の家畜は常時200億頭、屠殺される家畜は年間560億頭以上にまで膨れ上がった。世界動向の予測が正しいとしたうえで、畜産の規模が2050年までに倍になるとすれば、地球上の家畜は人口の10倍に達する計算になる(なお、この数値には水棲の食用動物は一切含まれていないことを考える必要がある)」
「飼料添加物にされる抗生物質の量は、ノースカロライナ州だけでも全米で人用医療品として使用される総量を上回っているとの試算があるが、これは深刻な結果を伴う。抗生物質を治療量以下の容量で使用することで、工場式畜産は生産性に変化をもたらすのみならず耐性病原体の誕生をも促すのである。(中略)オランダ、カナラのオンタリオ州、合衆国アイオワ州で近年行われた研究では、豚と豚の世話をする人々とから同系統のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出され、動物から人へと病気が感染したことが示された」
本書はアメリカを舞台としているが、CAFO化は日本でも同じであり、本書で示されるCAFOの問題は日本においても例外ではない。
日本の年々一戸当たりの畜産動物飼育頭数は増加している。また畜産動物の飼育方法の法規制の面でいえば日本はアメリカよりも遅れているという実態がある。
http://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=422
さらに一戸当たりの豚の飼養頭数は日本が1,435頭アメリカ946頭と、集中飼育度で日本はアメリカに引けをとらないという状況である(2014年2月27 衆議院予算委員会篠原孝委員資料より)
持続可能な小規模畜産が駆逐され、動物を監禁するCAFOにとって替わられるのを我々は恐れなければならないと本書は警鐘を鳴らす。
「工場式畜産は安い食料を提供してくれるというのは良く繰り返される主張だが、それはただ購入の際に安いということでしかなく、周囲の汚染浄化などにかかる巨額の費用や、かさみ続ける健康維持コストは「外部化」される。つまり市民の税金で賄われる。」
本書の最後には、私たちにできることがいくつか提示されている。
すなわち
「動物性食品は厳選し、食べる量を減らし、別の食材で代用する」
「動物の権利を顧みない会社を支持しない」
「人道的に育てられた動物の食材、地域で育てられた新鮮な食材を小規模農家から購入するよう、地域の食料品店や料理店に頼んでみる」などだ。
「食べる者として、あなたはきっと、あなた独自の意思表明をおこなえるはず」だと本書は訴えている。